歯科心身症とは?

歯科の治療対象領域である顔・顎・お口は、知覚神経に富んでいます。口唇やお口の中の粘膜は触覚・痛覚に敏感で、舌はさらに味覚をも感じます。歯も歯の根の周りの神経感覚で、髪の毛一本でも識別できるほど敏感です。この顔・顎・お口の感覚に関連した心身症が歯科領域の心身症の特徴です。ある感覚が過敏になったり、感覚の錯誤(まちがい)が起きるのです。(根管長測定器

 

実際には患者さん本人は確かに感じているのに、直接お口の内や外に関連する原因が見つからない状態となります。患者さんは歯・歯ぐき・舌・口唇などに問題があると強く思っていますが、その部位の治療では本来の症状は消退しないのです。(歯科用ハンドピース )

 

このようにお口に関連する器官の感覚に異常が生じ、原因が分からすに治療期間が長期となる方が多く、これが歯科心身症の特徴です。また、患者さんに現れる症状が多彩で、いろいろなケースがあることも特徴といえます。


歯科心身症の治療法

歯科医師からの説明で「何でもない」ことが分かり、安心してお帰りいただける方も多くいらっしゃいます。しかし、もし心身症であることが判明した場合どのような方法で治療すれば良いのでしょうか。治療の流れは大きく分けて2つの治療法があります。

 

1)心理療法(サイコセラピー)について
一つめは心理療法(サイコセラピー)です。心理療法はいわゆる医療のカウンセリングと考えてください。心理療法には、いろいろな方法があり、担当医やカウンセラーにより得意な方法がありますのでそれを行ってもらうことから始まります。

 

歯科心身症では、症状に対して意識が集中し、いわゆる症状に「とらわれた」状態の方が多くいらっしゃいます。(図1)歯科治療などで強い不安が生じると、その不安が治療した部位に意識を集中させます。意識が集中した部位の感覚は敏感になるため、今まで感じていない感覚が生じます。この感覚に対して、歯科治療をはじめとした何らかの対処行動をとることになります。しかし対処行動をとることで、さらに意識が集中し、感覚が過敏になります。この悪循環にはまると、症状は継続し悪化していきます。

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「とらわれ」は個々人の考え方のパターンです。このパターンに気付き、パターンを意識して変えていくことが心理療法の働きです。一方では考え方には関係なく、行動のみを変更していく方法もありますが、各症状に適切な方法が選ばれると治療の効果が上がります。

 

2)薬物療法について
二つめはお薬を使う薬物療法です。お薬としては、精神に働きかけるお薬を使います(向精神薬と言います)。精神面に影響があるお薬を使うことに抵抗感がある方や、副作用を恐れ、お薬を使うことに納得されない方もいらっしゃいます。最近、心身症は脳機能の不調から生じていることが判明してきました。このため脳機能に直接影響のあるお薬が、最も効果をあげることが理解できます。適切に使用すれば効果は著明です。副作用もお薬の使い方に慣れた先生であれば、心配することはありません。実際の診療では、向精神薬に関し、精神科や心療内科にご紹介し、処方をお願いすることもあります。

 

治療期間としては1ヶ月程で変化が現れる方もいますし、半年~1年以上通院が必要な方もいます。病気で悩んでいる期間が長いほど、「1分1秒でも早く治りたい」と思うものです。しかし焦りは禁物です。治療開始当初、すぐに効果が現れ無いことであきらめないでください。少しでも症状が良くなったところに注目し、逆に悪くなったとしても焦らず、あきらめず、全体では良い方向に向かっていることに気付いていただければ、治りもより早くなります。